2017年10月25日水曜日

松村景文 湖上月図



江戸後期、京都四条派画家の松村景文による「湖上月図」。

景文は四条派の祖である松村呉春の末弟でありながらも高弟として、四条派を隆盛に導いた画家。
その画風は柔らかな筆運びを特徴とし、たっぷりと余白をとった余韻のある作で知られています。

画題は湖上の月。
手前に湖、奥に緩やかな山々、天に月を配した月夜の湖を題としています。
京都生まれの景文にとって、湖とは即ち琵琶湖のことと推察されます。
とすると、琵琶湖に山月という要素からは、近江八景「石山秋月」が思い浮かばれるかもしれません。
省略を効かせた画面構成からは石山寺も消えていますが、留守文様として考えれば趣深いものがあります。
更に紫式部が石山寺に滞在し、琵琶湖を眺めながら源氏物語を起筆したという逸話を思えば、この風景は紫式部が見た景色を描いているともいえます。
景文得意の耽美的なこの画を前に、幽遠なる平安朝に思いをめぐらすことも、またおかしきことかもしれません。

当作は、京都美術倶楽部「当市山田定兵衛・山田定七両家入札目録」(大正15年)に掲載されております。
山田定兵衛とは、京都の大手呉服織物問屋。日本橋富沢町にも出店した、明治時代の大店でした。
また、山田定七は京都市下京区常議員。近代京都を代表する政財界人である浜岡光哲や中村栄助と共に関西貿易合資会社を設立(明治20年)するなど、やはり政財界を通じて活躍した人物でした。

時代の折れじわなどございますが、鑑賞に不自由する程ではございません。
ご希望の際はどうぞお問い合わせくださいませ。

松村景文
□生没年 安永八年(1779)~天保十四年(1843) 六十五歳没
□職種  四条派画家
□出自  松村呉春の末弟 京都の人
□称号  名直治 字土藻・子藻 通称要人 号景文・華渓
□師事  松村呉春
□門下  横山清暉・松川龍椿・西山芳園・八木奇峰・原田九美・磯野華堂
・国分文友・武村文眠・大原重徳・森義章・長谷川玉峰
□事績  山水・花鳥画を得意とし、特に写生画の花鳥に優れた。四条派を更に軽快かつ描写的に変化させ、同派を発展に導く。妙法院宮に近侍し、同寺に多くの襖絵を残す。
代表作「水辺群鴨」「梅に鶯」「鹿」「高麗馬図屏風」「四季花鳥図」
       (以上、落款花押大辞典(淡交社1982)より引用)